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じだいとひとびと
時代と人々
宮本 百合子
「婦人公論」1942(昭和17)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,256 字 · 17 页
女学校の学課はその混乱に対して全く何の力もなかった。大正初めのその頃文学好きな人は殆どみんな読んだワイルドの作品だのポウだの、武者小路実篤の書いたものを手に入る片はじから熱心に読み、自分から書くものはと云えば、手に負えない内心の有様とはかかわりない他愛のない物語だったことも、精神が不平均に芽立ちむらがったその年頃の自然だったのだと思われる。
四年生になると女学校では西洋歴史を習う。初めての時間、西洋史の先生が教室に入って来られた時、三十二人だったかの全生徒の感情を、愕きと嬉しさとでうち靡かせるようなざわめきがあった。
その女学校の女先生が制服のように着ていたくすんだ紫の羽織をつけただけは同じだが、その脊ののびのびと高い、やや浅黒い、額の心持よく緊張した顔立ちの若い先生は、第一瞥から暖い心情的な感じで若い生徒たちを魅した。多い髪がいくらか重そうにゆったりと結われているところも、胸元がゆったりとしているところも、動作の線がのびやかなのも、みんな生徒たちをよろこばせた。
それが、千葉安良先生であった。学校の空気には、抑えても溢れる若さに共感をもつような要素にかけていた。