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ばんか
晩夏
堀 辰雄
「婦人公論」1940(昭和15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,249 字 · 27 页
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夕方、私達が五つ六つの卓のあるきりの小さな食堂で、木の間ごしにちらちら見える湖水の面を眺めながら、セロリのついた野菜の皿に向っている最中、いましがた外から帰って来たらしい、外人の若い娘がふたりで食堂にはいって来た。先きにはいって来たのは、半ズボンに白いポロシャツという服装で、頭も男の子のように刈り上げた、目鼻立のきりっとした美しい娘で、続いてはいって来たのは、薔薇色の着物をきた肥り気味の、おとなしそうな娘だった。二人は私達の卓の傍をすうっと通って、向うの窓ぎわの卓に就いた。丁度私と白いポロシャツの娘とは向い合わせ、妻と薔薇色の娘とは背中合わせになった。
「きょうだいか知ら?」妻は小声で私に云ったが、それがポロシャツの娘を少年と見まちがえているらしい事に気がついて、私はおもわず微笑みながら首をふりふり、丁度食後の菓子を運んできた女中が立ち去るのを待って、「お前はあれを少年とまちがえているようだがね……あれは女性だよ」
「ほんとう?……」妻はそうかと云って振り向いて見るわけにもいかず、プディングを匙であぶなかしそうにすくいながら云った。
「女性は女性にちがいないが……あれは旦那様なのかも知れない。