轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ぎゃっこう

晩年

太宰 治

太宰治『晩年』。同一底本的分册已合并为一书。收入:逆行、列車、魚服記、猿面冠者、葉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,459 字 · 91 页

青空文庫

私はしぶる妻をせきたてて、一緒に上野駅へ出掛けた。

一〇三号のその列車は、つめたい雨の中で黒煙を吐きつつ発車の時刻を待っていた。私たちは列車の窓をひとつひとつたんねんに捜して歩いた。テツさんは機関車のすぐ隣の三等客車に席をとっていた。三四年まえに汐田の紹介でいちど逢ったことがあるけれども、あれから見ると顔の色がたいへん白くなって、頤のあたりもふっくりとふとっているのであった。テツさんも私の顔を忘れずにいて呉れて、私が声をかけたら、すぐ列車の窓から半身乗り出して嬉しそうに挨拶をかえしたのである。私はテツさんに妻を引き合せてやった。私がわざわざ妻を連れて来たのは妻も亦テツさんと同じように貧しい育ちの女であるから、テツさんを慰めるにしても、私などよりなにかきっと適切な態度や言葉をもってするにちがいないと独断したからであった。しかし、私はまんまと裏切られたのである。テツさんと妻は、お互に貴婦人のようなお辞儀を無言で取り交しただけであった。私は、まのわるい思いがして、なんの符号であろうか客車の横腹へしろいペンキで小さく書かれてあるスハフ 134273 という文字のあたりをこつこつと洋傘の柄でたたいたものだ。