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あんごうすうじ

暗号数字

海野 十三

「現代」大日本雄辯會講談社、1938(昭和13)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,312 字 · 39 页

青空文庫

「おい山下君。ど、どこかへ逃げちゃったよ」

彼は、自分にも記憶のない人の名をよんだりなどしている。

彼は午後十時十八分の列車に、ようやくのりこむことが出来た。そして寝台の中にもぐりこむが早いか、蠎のような寝息をたてだした。よほど飲んだものらしい。

列車ボーイに起されて目がさめた。

まだ腰がふらふらと定まらない。洗面所へ行ってみると、満員だった。窓外は朝の山々や田畑がまぶしく光っていた。

車室へかえってくると、もう寝台はきれいに片づいていた。食慾がない。どうも変だ。昨日はなぜあのように飲みすぎたのだろう。軍艦横丁のおでん屋に顔をつきこんでから、ひどく酔のまわったことを覚えている。それから後は、連が出来たらしく、誰かと一緒に飲んでまた飲みつづけた。大事を前にして、どうも不思議な自分の行動だった。酔いではなく、麻酔のようにも思う――と帆村は悔恨の体である。

富山駅では大勢の人が下りた。

帆村もぐらぐらする腰をあげて下りた。外へ出たがどうも気分がよくない。

とうとう思いきって駅前の交番へとびこんだ。甚だ気がひけるがあまり頑張っていて更に大きな失態をしては、事件の依頼主に対し相済まぬと思ったからである。