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あんごうレコードじけん

暗号音盤事件

海野 十三

「講談雑誌」1942(昭和17)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,583 字 · 24 页

青空文庫

だから、宝物はまだ安全に、そこに隠されてあるのだと思う」

「ふーん、心細い話だ」私が、溜息と共にそういうと、白木は何を感じたか、私の傍へつと寄り、

「おい六升男爵。そうお前さんのように、何から何まで疑い深く、そして敗戦主義になっちゃ困るじゃないか。始めからそんな引込思案な考えでいっちゃ、取れるものも取れやしないよ」

「そうかしら」

「そうだとも。たしかにこの部屋にあるんだ。だから探し出さずには置かないぞ――とこういう風に突進していかなくちゃ、そこに顔を出している宝だって、見つかりはしないよ。引込思案はそもそも日本人の共通な損な性質だ」

白木は一発、痛いところをついた。そうかもしれない。私たちは、従来の教育でもって、どうもそういう性格がむきだしになっていけない。取れるものも取れないと、白木の警告した点は、さすがに身にしみる。

「おーい、待ってよう」

このときようやく、お嬢さん方の中で、一等健脚な一団が、私たちの視界の中までのぼってきた。

それは五人ばかりの一団だった。

先登に駈けあがって来た娘の顔を見て、私の心臓は少し動悸をうった。それはバーバラという非常に日本人に近い顔立ちの娘で、昨日から私の目について、望郷病らしいものを感じさせられたのであった。