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あんごうレコードじけん

暗号音盤事件

海野 十三

「講談雑誌」1942(昭和17)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,583 字 · 24 页

青空文庫

「よかろう、もうその位で……。八時出発は分ったが、目的地は何処かね。服装の準備のこともあるからね」というと、白木は案外だという顔付で、私を見直して、にこにこしながら、

「ああそうだった、目的地をまだ云わなかったが、ゼルシー島だよ。ジブラルタルから南西へちょっと一千キロ、マデイラ群島中の小さな島だ。ゼルシー島だよ」

「ゼルシー島か。ゼルシー島といえば、メントール侯の城塞のある島だ」

「そうだ、物覚えがいいね、君は。しかしその城塞が、ドイツ軍の爆撃に遭って、三分の二ぐらいは崩れてしまっていることを知っているかね」

「ほほう、そんなことがあったのか。僕は知らなかったね」

「勿論そうだろう。おれだって、昨晩それを聞いて始めて知ったばかりだ」

「白木、君は昨夜、どこに居たのかね」

「昨夜は、ドイツ軍人とその第五列との秘密集会の席にいたよ。――さあ、夕方まで、まだちょっと時間があるから、おれはエミリーの酒場に敬意を表してくる。そうだ、それからプリ銃砲店に寄って、倉庫探しの結果を聞いてくるからね」

「倉庫探しというのは、何のことかね」

「いや、今度ゼルシー島に持って行きたいものがあるので、それを探してくれるように頼んで置いたんだ。