轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
すると、あんまりその方に気を取られて歩いていたために、日比谷の大通りの出口で、あぶなく向うから来た一台の自動車と衝突するところであったが、自動車の方で急角度に外れたために無事で済んだ。
「危い」
と運転手はその時に叫んだが、中に居た女らしい客人も小さな叫び声を揚げた。そうして驚いて振り返った私に向って運転手は、
「馬鹿野郎」
と罵声を浴びせながら走り去った。
その運転手の人相は咄嗟の間の事であったし、おまけに荒い縞の鳥打帽を眼深に冠って、近来大流行の黒い口覆いをかけていたから、よくは解らなかったが、カーキー色の運転服を着た、四十恰好の、短気らしい眼を光らした巨漢であった。自動車は軍艦色に塗ったパッカードで番号は後で思い出したが、T三五八八であった。
一寸した事ではあるが、このはっとした瞬間に私の頭の中はくるりと一廻転した。そうして新しい注意力でもってもう一度聖書を調べ直してみると……。
……私は直ぐに気が付いた。聖書の文句に引っぱってある赤線は、只の赤線でない。これは一種の暗号通信のために引いたものである。その証拠には、誰でも感服してべた一面に線を引くにきまっている基督の山上の説教の処には一筋も引いてなく、却ってその他の余り感服出来ない処に引いてあるのが多い。