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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
私は帽子と外套の塵を払って、買って来た烏龍茶の包みを取り上げる迄に、これだけの事を考えた。別段、今更に考え直す迄もない事であるが、現在世にも珍らしい少年が、滅多に人を迎え入れた事のない私の家に、何の苦もなく侵入して来て、応接間で私を待っている……という事実に対して、何となく心が動いたために、今更に自分の孤独な生活が自分の眼に……否、心に浮み出たのである。そうして気のせいか少年は、こうした私の生活や、性格や、事によると経歴までも知っているように思われてならなかった。
……が……しかし果して知っているであろうか。それともこっちの顔と名前だけを知っているのであろうか。そうして一体何の用事で来たのであろう。どこの者であろう。日本人か西洋人かすらまだハッキリわからないのだが……怪しくも亦、不思議な少年……。
……イヤ、これはいけない。こんなに想像ばかりしているようでは駄目だ。今日は頭がどうかしているらしい。いつもの自分にも似合わないトンチンカンな頭の使い方ばかりしている。事によると彼の少年に眩惑されているせいかも知れないが……職務を離れるとこうも頭がだらしなくなるものか知らん。