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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
どうやら唇を噛んでいるらしい態度である。
「……成程……それでその復讐をするために僕の手伝いを求めに来たのですね」
少年は微かにうなずいた。又もハンカチを顔に当てて肩を窄めた。
私は、その姿を見ると堪まらなくなって、机の上に両手を支えた。頭を幾度も幾度も下げて謝罪った。
「……済まない……済みません。僕は君の御両親ばかりでなく君に対しても会わせる顔がないのです。僕は君等親子にこれ程の信頼を受ける価値はない人間です。僕は世間で云うような名探偵でも何でもありませぬ。凡クラな、トンチンカンなヘボ探偵に過ぎないのです。それは君にだって解っているでしょう。……それだのに、こんなにまで信頼を受けてはトテモ僕はたまらないのです……こんな、老耄のヘボ探偵を、どうして君がそんなにまで信頼してくれるのか、僕は殆んど了解に……」
ここまで私が立て続けに饒舌り続けて来ると、少年はその涙に濡れた顔を急に上げながら、片手で私の言葉を遮り止めた。その眼には云い知れぬ敬虔の念が輝き満ち、その片頬には物悲し気な微笑さえ浮んでいた。
「先生……」
そう云って椅子から立ち上った少年の態度には上官に対するような厳粛さがあった。