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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

と感付いたり、馬道あたりの俥屋が、普通の客としか見えない男を捕えて「吉原まで如何です」と図星を指したりするのも皆この「第六感」の一種に数えられるのである。

しかも、私の考えに依ると、斯ような第六感の作用は人間ばかりに限ったものでない。広く動植物界を見渡してみると誠に思い半ばに過ぐるものがある……否……人間世界に現われる第六感の実例よりもずっと甚しい、深刻な現象を到る処に発見する事が出来るので一々数えてはおられない位である。早い話が地平線下に居る獅子を発見して駱駝が慄え出したり、山の向うに鷹が来ているのを七面鳥が感付いて騒ぎ立てたりする。蛭が数時間後の暴風を予知して水底に沈み、蜘蛛が巣を張って明日の好天気を知らせ、象が月の色を見て狼群の大襲来を察し、星を仰いだ獺が上流から来る大洪水を恐れて丘に登る。そのほか、犬、猫、伝書鳩が故郷に帰る能力なぞ、五官の活用ばかりでは絶対に説明出来ない事である。しかもこれがもっと下等な生物になるともっと明瞭に現われて来るので、朝顔の蔓が眼も何もないのに竹の棒を探り当て、銀杏の根が密封した死人の甕を取り囲む。又は林の木の枝がお互同志に一本でも附着き合ったり、押し合ったりしているものはなく、皆お互に相談をして譲り合ったかのように、程よく隔たりを置いているのも、この考えから見れば何