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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
その時に誰か私の前に近づいて来るように思ったから、何気なく眼を開いて見ると、それは一人のボーイであった。
ところでそのボーイが差出した紫色の包みを受取って、中味を検めようとした時に、その包んだ風呂敷が、紫色の絹ハンカチである事に気付くと同時に、私ははっとさせられた。そうして今日じゅうの出来事……否、二年前の東京駅ホテル殺人事件以来の出来事の裏面に潜む、想像を超越した奇怪な出来事が、一時に解決されかかったように思いつつ、眼の前に並んだ四枚の皿を見まわした。
それから私は立ち上って出て行きがけに、念のため私が自分で註文した食事が、黒麺麭とスープとハムエッグスと、ウイスキーを入れた珈琲の四皿に相違なかったかどうかをボーイに問い確かめてみると、ボーイはその通りですとハッキリ答えた。その時に私は一切の秘密を明かにする裏面の真相が電光のように私の頭に閃めき込むのを感じたのであった。
私の第六感の作用のすばらしさをハッキリと感じたのであった。
読者は記憶しておられるであろう。
去る大正七年十月十四日の朝、東京駅ホテル第十四号室で起った岩形圭吾氏こと、志村浩太郎氏の変死事件を探るために、私はその朝の午前十一時頃カフェー・ユートピアへ来た。