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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
何とかしてこの少年の希望を他所へ転換出来ないものかと苦心しいしい、今度は別の方向から質問してみた。
「フーム。成る程……では、君が最後に従事しておられた仕事は何でしたか……」
こう訊ねると少年はきっと顔を上げた。何故かしらず、云い知れぬ気持の緊張に双頬を白くしながら、キッパリと云った。
「……はい……丸の内で昨日から興行を始めておりますバード・ストーンの曲馬団と一緒に参りました」
「えッ。あの曲馬団……」
と私は思わず大きな声を出した。そうして腹の底で……ウームと唸りながら眼を閉じた。
何を隠そう、そのバード・ストーン曲馬団こそは、私の辞職の直接の原因となっているもので、この曲馬団に関する私の意見と、警視総監……否、現内閣との意見が衝突さえしなければ、あんなに憤慨して辞職する必要はなかったものである。同時に、この少年がそのバード・ストーン曲馬団に属していた事が判明するとなれば、問題は最早、区々たる呉井嬢次対、狭山九郎太の個人に関係した問題でなくなって来る。拡大も拡大……グーッと範囲を大きくして国家的、もしくは世界的の重大問題と変化して、私の頭の上から大盤石のように圧しかかって来るのであった。