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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
丸卓子の上に両手を突いて、眼を剥き出して女の顔を見た。
珈琲の匙がからりと床の上に落ちた。
「……叔父様……ミスタ・サヤマ……どうして来ておりましたか」
「はい。私も初めは吃驚致しました。あんまり変りようが非道うございましたから……ですけど嬢次様は初めから、そうらしいと気が付かれましたので、わざと怪しまれないように近い処に坐っておられたのだそうでございますが、そのうちに叔父が叫び声をあげて席を飛び出しましたので、いよいよそうに違いない事が、嬢次様にお解りになったそうでございます」
「どうして……」
「叔父は、妾共のする事をいつの間にか残らず察しておりまして、次の馬の舞踏会の最中に騒ぎが初まりそうなのを心配して、あんなに狼狽たのに違いございませぬ。……でも叔父でなければどうしてそんな事まで看破りましょう。……叔父がいつもこうして妾を見張っていてくれる事がわかりますと、妾は有り難いやら、恐ろしいやら致しました」
「ジョージは叔父様に会おうとしませんでしたか」
「いいえ。その時に嬢次様は云われました。……最早仕方がない。叔父様は何もかも知っておられる。そうして叔父様は自分が曲馬団を非道い眼に会わせようとしたものだと思っておられるに違いない。