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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

その大切な絵葉書を五枚も叔父の手に渡すという事は嬢次様にとっては生命を渡すのと同様でございます。それ位の事がわからなくて、どうして警視庁の捜査課長が勤まりましょう。又、これ程までにして頼まれました事を否と云うような無慈悲な叔父でない事は妾もよく存じておるのでございます」

ストーン氏は心持ち肩をすぼめたまま、そう云う女の顔を凝視していた。いつとなく雄弁になって来る女の鋭い理詰めと、その理詰めを通じて判明って来る女の頭のよさに呆れ返っているらしい。しかし間もなく咳払いを一つして、七時三十五分を指している背後の時計を振り返ると、元の通りの寛いだ態度に返ったのは……高の知れた女一匹……という気になったものであろうか。それとも私がまだ暫くは帰って来ないという女の言葉を信じて、安心をしたせいでもあろうか。

「それからその手紙を、どうしてミスタ・クロダ・サヤマに渡しましたか」

「叔父はそれから曲馬場をまわって、東京駅ホテルの前に行って、二階の窓の一つを見ながら突立っておりました」

「……それは何故ですか」

「何故だか解りませぬ」

「何分位居りましたか」

「五分ばかり」

「そしてどこへ行きましたか」