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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
けれども間もなく大きな声で……ジョージ・クレイ待てっ……と申しましたので吃驚致しまして、二人とも衝立の蔭に小さくなりましたが、そのうちに気が付いて衝立の彫刻の穴からそっと覗いて見ますと、叔父はいつの間にか食事を済まして、うとうと居ねむりをしておりました。そうして間もなく……聖書……燐寸燐寸……ムニャムニャムニャ……と云って首をコックリと前に垂らしました。見ていたボーイが皆笑いました」
「その時に新聞を渡しましたか」
「いいえ。わたくし達は叔父が睡りこけたのを見澄まして表へ出ますと、ちょうど通り蒐った相乗俥がありましたからそれに乗って幌をすっかり下して、その中から二階のボーイさんを呼び出してもらって、今から十分ほど経ったら二階の窓際に睡っているこんな姿の紳士に渡して下さいと頼みました」
「それからこちらへ帰って来たのですね」
「いいえ。それから色々と買物を致しました」
「お話しなさい」
「それから、わたくし達の相乗俥がほんの一二間ばかり新橋の方へ駈け出しますと、間もなく左側に貸自動車屋を見付けましたので、大喜びで俥を降りて車夫に一円遣りまして、そこの新しいフォードに乗りかえて日本橋の尾張屋という壁紙屋へ行って壁紙と糊を買いまして、三越へ行って絨毯や、電燈の笠や、椅子のカヴァーや時計を求めて食事を致しました。