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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
「はい……」
女は又も二三度瞬をした。微笑がストーン氏の頬を横切って消え失せた。
「あなたはジョージのお母さんの名前を知っておりますか」
「はい。嬢次様から承わりました。志村のぶ子様とおっしゃるのでしょう」
「は――い。その志村のぶ子の所に行くとジョージは云いましたか」
「はい。そう仰言って貴方がお出でになる二十分ばかり前に、此家をお出かけになりました」
微笑がもう一度ちらりとストーン氏の唇を掠め去った。
「ジョージはシムラ・ノブコの処へ行く事は出来ませぬ」
「何故でございましょう」
ストーン氏は一寸躊躇した。しかし思い切った口調で云い放った。
「シムラ・ノブコは二年前に天国に行っております」
「そのようなこと……どうして御存じなのですか」
ストーン氏は又一寸考えた。けれども今度はすぐに言葉を続けた。
「二年前の日本の新聞に出ております。運転手に欺されて、海に連れて行かれたと書いてあります」
「けれども、お亡くなりになったとは書いてございますまい」
「……ははは……あなたその新聞見ましたか」
「はい……」
「けれども貴女は今……クレイ・ジョージが志村のぶ子と一緒に天国へ行くと……」