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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

「何かあれからタネが上りましたか。電話で承わりました以外に……」

まだ若い熱海検事は無言のまま恭しく帽子を脱った。そうして静かに志免警部をかえりみた。

「……ええ。この山本というボーイが何か知っているらしいのですけども……」

と引き取って答えながら飯村警部は又ボーイの顔を見た。

「……ワ……私は……何も知らないんです。何もしやしないんです。僕は……僕は……僕は……」

と突然にボーイが叫び出した。唇はわなわなと顫えて、涙が蒼ざめた頬を伝い落ちた。私はわざと朗かに笑い出した。

「ハハハハハ。誰もお前を犯人とは思っていないから安心しろ。しかし、お前一寸その靴を両方とも見せてくれないか」

こう云うとボーイはもとより室の中の一同は妙な顔をした。しかしボーイは素直に白い半靴を脱いで差出したので、私はそれを両方に提げて廊下に出たが、やがて帰って来ると、靴をボーイに返して飯村警部に代って訊問し初めた。

「お前は岩形さんを受持っていたんだろう」

「そうです」

「いくつになるね」

「十八になります」

「ハハハハ。十八にしちゃ意気地がなさ過ぎるじゃないか。お前が犯人でない事は……俺が……この狭山が保証する。