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きょくばだんの「トッテンカン」

曲馬団の「トッテンカン」

下村 千秋

「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年9~11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,620 字 · 34 页

青空文庫

少女は、新吉を見つけると、

「おや、こんなところに黒ん坊の子がいるよ。」と言いました。新吉はどぎまぎして、馬車からずり下りました。

「お前さん、どっからついて来たの?」

「ぼ、ぼ、ぼくね。」と新吉はどもってから「僕、曲馬の仲間に入りたいんだよ。」

やっとそれを言いました。

「いやーだ。」

そう言ったかと思うと、少女はくるりと背中を向けて走り去ってしまいました。と間もなく、少女はもっと年の多い女の人をつれて、またやって来ました。

「お前、曲馬団へ入りたいんだって? いったいどこから来たの?」

「昨日まで曲馬をやってたろう。あの町からついて来たんだ。」

「それで、あんたの家は。」

「僕、鍛冶屋の小僧だよ。」

「どうりで、まっくろけの顔をしていると思った。それで、だまって鍛冶屋を出て来たんだね。悪い子だね。親方に怒られるから、さっさとおかえんなさいね。」

「でも僕、鍛冶屋へかえるのいやなんだよ。親方もおかみさんも意地悪で、しょっちゅうひどい目にあわせるんだもの。」

「曲馬団の中だっておんなじことだよ。曲馬団の中はもっとつらいことばかりだよ。ね、だからそんなつまらない考えを起こさずに、おとなしくおかえんなさい。