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きょくばだんの「トッテンカン」
曲馬団の「トッテンカン」
下村 千秋
「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年9~11月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,620 字 · 34 页
ここは東京から北の方へ二十里ほどはなれた、ある湖の岸の小さな町。汽車も通らず電車もなし、一日にたった二度乗合自動車が通るきりの、しずかなしずかなこの町に、だしぬけにこんな行列が来たのですから、大へんです。町は一どきに目がさめたように活気づき、町の人々は胸がわくわくして仕事など手につかず、みんな往来へ出て、目をみはって行列を見ています。わけても、夏休みでたいくつしていた子供たちは、一年中のお祭りが一どきに来たようによろこび、もうじっとしてはいられず、行列の後からぞろぞろぞろぞろとついて行きます。元気のいい男の子たちは足も地につかぬ思いで、飛びまわり、はねまわり、一寸法師の前へ立って背くらべをしたり、象のそばへ来て袋の下から長い鼻をのぞいたり、楽隊といっしょに足拍子を取ったり、ライオンや虎や熊をこわごわと見たり、馬の上の少年少女たちに失敬してみたり、旗持ちの旗をかついだり、もうまったく夢中になっています。なにしろこの町はじまって以来の出来ごとで、一寸法師はもちろん、象もはじめて、ライオン、虎、熊もはじめて見る、という子供たちが多いのですから、こういうさわぎをするのも無理はないのです。