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きょくばだんの「トッテンカン」

曲馬団の「トッテンカン」

下村 千秋

「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年9~11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,620 字 · 34 页

青空文庫

それは、新吉が、ファットマンの鼻の上から無事に下へ下りたとき、例の団長がいきなり飛んで来て、新吉の横面をぴしゃりとなぐったことでした。

「ふぬけめ。」と団長はどなりつけました。そして新吉の手が抜けるほどぐいと引き立て、引きずるようにして中央の垂れ幕のかげへ連れて行ってしまいました。

「僕たちはよろこんでいるのに、あいつは怒っていやがる。馬鹿な奴だなぁ。」と見物人は話し合いました。

団長は、新吉を楽屋へつれて行くと、またひどくなぐりました。

「またもだらしねえことをしやがって、このトンチキめ!」

そのとき、そばから、

「団長さん、団長さん、かんにんしてやって下さい。」という泣きそうな声がしました。見ると、それはふだんの着物をきたきえちゃんです。団長はそのきえちゃんを怒りつけているのだとばかり思っていたのに、そばから別なきえちゃんが顔を出したので、あっけにとられてきょとんとしてしまいました。

が、まもなく、新吉がきえちゃんの身代わりになって芸をやったのだと知ると、どこまでも意地悪でつむじ曲がりの団長は、こんどはそのことを怒り出しました。

「貴様はなぜほかの人に芸をやらせたのだ。