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しょきかん

書記官

川上 眉山

「太陽」1895(明治28)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,182 字 · 36 页

青空文庫

脇には七宝入りの紫檀卓に、銀蒼鷹の置物を据えて、これも談話の数に入れとや、極彩色の金屏風は、手を尽したる光琳が花鳥の盛上げ、あっぱれ座敷や高麗縁の青畳に、玉を置くとも羞かしからぬ設けの席より、前は茶庭の十分なる侘びを見せて、目移りゆかしくここを価値の買いどころと、客より先に主人の満足は、顔に横撫での煤を付けながら、独り妙と隈なく八方を見廻しぬ。

豊は碁石の清拭きせよ。利介はそれそれ手水鉢、糸目の椀は土蔵にある。南京染付け蛤皿、それもよしかこれもよしか、光代、光代はどこにいる。光代光代、と呼び立てられて心ならずも光代は前に出づれば、あの今日はな、と善平は競い立ちて、奥村様はじめ大事のお客であるから、お前にも酌に出てもらわねばならぬ。今っから衣服も着更えて早く支度を、と言いつくる。

初めより光代はよき顔もせず、耳の役とばかり聞いていたりしが、今日はお腹が痛みますから、御免を蒙りまする。といつものわがままのかかる時に勢いを見せて、そのまますげなく座を立ちぬ。その日はついに、室の外へとは顔も出さざりき。

ほどもなく入り来る洋服扮装の七分は髯黒の客人、座敷に入りてしばらくは打ち潜めきたる密議に移りしが、やがて開きて二側に居流れたるを合図として、運び出づる杯盤の料理は善四郎が念入りの庖丁、献酬いまだ半ばならず早くも