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そがのあばれんぼう

曽我の暴れん坊

坂口 安吾

「キング 第三〇巻第六号」1954(昭和29)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,123 字 · 19 页

青空文庫

たがいに堅く二世を誓い合って、放しませぬ離れませぬと熱々の間柄である。

「この虎という女だけはオレが心から愛しているのだから、お前も今度は夜逃げをしなくとも大丈夫だ」

「そうかも知れないね。いつも女が後になってオレに知れるが、今度は先に知れたからね」

「客席にでるのが辛いから早く結婚してくれと実は目下せがまれてな」

「もう分ったよ」

「どうもお前は木石でいかんな」

大磯の宿へはいってくると、十郎を認めて駈け寄ってきた一人の白拍子、まだ化粧もしていない黒い顔を押しつけるようにして、

「どうしたのよ、十郎さん。ちッとも姿を見せないで。お嬢さんがヒステリーで大変ですよ。実はね、今もお嬢さんが悪侍と大ゲンカしてるんですよ」

「侍とケンカ?」

「ええ、そうなんです。身分の低い侍ですが大そう腕ッ節の強い奴らでしてね。その親分格は黒犬の権太という奴ですが、ちかごろこの宿を軒なみに荒してるんです。今日はウチへ来ましてね、無理に上ろうとするところへお嬢さんがヌッと現れたんです。フトコロ手かなんかで悪侍をハッタと睨んでね。ウチへ上ってお酒をのむなら私をスッパリ斬り殺して上っておくれ、私が息をしているうちは一歩だって入れないよ、とあのお嬢さんがタンカをきっちゃったんですよ。