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さいきんよろこばれているものから
最近悦ばれているものから
宮本 百合子
「時事新報」1920(大正9)年2月17~19号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,424 字 · 7 页
彼の二重瞼の大きな眼は明るい太陽の真下でも、体中に油を塗りつけた宝玉商の Thengobrind が「死人のダイヤモンド」を盗もうとして耳のような眼玉を輝かせた蜘蛛の魔物の膝元に忍び寄る姿を見るだろう。
真個に彼は、奇怪な美を持っている。彼の書く寓話は地上のものではないようにさえ見えるのである。
けれども、其なら彼はその耽美の塔に立て籠って、夕栄の雲のような夢幻に陶酔していると云うのだろうか、私は単純に、夢の宮殿を捧げて仕舞えない心持がする。夢で美を見るのと、醒めて美を見ると違うのに彼はおきているのだ。起きていて、心が彼方まで貫いているのだと思う。其は彼の作に漲っている深い力強い意向を考えれば解るのだろうと思う。彼の空想の豊饒さの裡には、蒼ざめた果敢なさや、愚痴や只甘い歎息は左様ならを云われている。
Lord Dunsany に次で、現今米国の知識階級に悦ばれているのは、John Galsworthy や H. G. Wells などであろう。
二人はまるで異った傾向を持っているらしい。誰でも知っている通り H.G.Wells は科学小説とでも云うべきものを独特な天地にしているに対して、Galsworthy の方は、面倒な理屈は抜きで、読む者をどしどしと惹つけて行くような筆致を持っている。