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つきとてぶくろ

月と手袋

江戸川 乱歩

「オール讀物」文藝春秋新社、1955(昭和30)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,541 字 · 80 页

青空文庫

「わかったわ。そうして、あなたのアリバイを作るのね。股野が殺されたときに、あなたはまだ門をはいろうとしていたのだということを、証人に見せるのね。だから、その証人にはパトロールのお巡りさんが一番いいというわけね。そうすると、あたしはここにいたことになるけれど、かよわい女だからどうにもできなかった。……あら、それじゃ、あたし犯人を見たことになるのね。どんな男だったと聞かれたら……」

「覆面の強盗だ」

「どんな覆面? 服装は?」

「黒い服を着ていた。こまかいことはわからなかったというんだ。覆面は目だけでなく、顔全体の隠れるやつだ。ヴェールのように、黒い布を鳥打帽からさげていたと云うんだ。両手に軍手をはめていたのはもちろんだ。だから指紋は一つも残っていない」

「わかった。あとは出まかせにやればいいのね。でも、あたし自身が犯人だと疑われることはないの? かよわい女だから、股野に勝てるはずがないっていう理窟? それで大丈夫かしら」

「それには、このベルトとネクタイと鍵だ。時間がないから一度しか云わない。よく聞いてるんだよ。僕が今にそとへ出て行くから、そのときすぐに、この部屋の入口のドアに鍵をかける。