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げっせかいばっしょうき

月世界跋渉記

江見 水蔭

「探検世界 秋季臨時増刊 月世界」成功雑誌社、1907(明治40)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,132 字 · 19 页

青空文庫

一番にこれを見付けた助手は、あんまり可笑しいので、

「先生大変お様子がよろしいじゃありませんか。」

と冷評したが何とも返事もしないで相変らず首を振っている。

「どうしたんだろう。それにしてもあの恰好は可笑しい。ハハハハハハ。」

と高笑をしたが、不思議にも自分の笑う声が聞えないのに気が付いた。

「おや。」と思って又大きな声を出して見たが矢張聞えない。いよいよ不思議に思って、月野博士に追付いて、その袖を引きながら、

「先生、私はどういう加減か耳が聞えなくなっちゃいました。」

と訴えると、矢張博士にも何をいっているんだか判らない。博士は急に思い付いたようにポケットから手帳を出して、

「これは空気がないために音響が伝らないのだ。」と書くと、不思議そうに二人の様子を見ていた他の連中も成程と合点して、

「ははあ。それで聞えなかったのか馬鹿らしい。ははははは。」

と高笑をしたが、口が開いたのが見えるばかり、さっぱり笑声も何もしない。

不思議なる空気孔の発見。桂田博士の失跡

でこの後は用事の時は筆談する事として、又ずんずん向うに進んでいると、晴次の踏んだ石がグラッと揺いでそこに一つの穴を見出した。