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ふくそうについて
服装に就いて
「文藝春秋」1941(昭和16)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,180 字 · 25 页
を述べようと気構えた時、友人は笑い出して、ちがう、ちがう、ショオは身の丈七尺あるそうじゃないか、七尺の小説家なんて日本じゃ生活できないよ、と言って、けろりとしていた。私は、まんまと、かつがれたわけであるが、けれども私には、この友人の無邪気な冗談を心から笑う事は出来なかった。何だか、ひやりとしたのである。もう一尺、高かったなら! 実に危いところだと思ったのである。
私は高等学校一年生の時に、早くもお洒落の無常を察して、以後は、やぶれかぶれで、あり合せのものを選択せずに身にまとい、普通の服装のつもりで歩いていたのであるが、何かと友人たちの批評の対象になり、それ故、臆して次第にまた、ひそかに服装にこだわるように、なってしまったようである。こだわるといっても、私は自分の野暮ったさを、事ある毎に、いやになるほど知らされているのであるから、あれを着たい、この古代の布地で羽織を仕立させたい等の、粋な慾望は一度も起した事が無い。与えられるものを、黙って着ている。また私は、どういうものだか、自分の衣服や、シャツや下駄に於いては極端に吝嗇である。そんなものに金銭を費す時には、文字どおりに、身を切られるような苦痛を覚えるのである。