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ぼうがくととうきょう
望岳都東京
木暮 理太郎
「霧の旅」1934(昭和9)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,243 字 · 61 页
と訊ねられたことがありました。兎に角あそこで朝から晩まで居たことが幾度もあります。勿論寒い風が吹いているので、腰から下がすっかり冷えてかじかんで、帰ろうと思って立ち上ると足がふらふらして立てない。この忍耐は容易でありません。何にも頼まれもせぬのに大骨折ってこんな苦労をせずとものことと、馬鹿馬鹿しく思うこともありますが、どうも癖で止められません。
所でまた朝非常に早いといけないのです。何故かと云いますと、夕方風がなぎると、煤煙が夜の間にすっかり沈滞して居ます。朝になって風が起ると同時に、其の煤煙がそろそろ吹き掃われるのでありますから、早い方がよかろうと思って行って見ても、外の地方ならば好いのですが、東京では駄目で、今まで沈んで居った煤煙が流れ去るのには一時間半位かかります。それが十米前後の風に吹き掃われてしまった時がいいので、余り早過ぎると二時間許り待たなければならぬことになります。先ず大抵は午前七時前後、それから約二時間、遅くて十時頃までが一番はっきり見えます。尤も終夜風の吹き続いていた朝ならば、早くても差支ない訳であります。
しかし茲にまた一の故障があります、というのは太陽が低く横から当るので、前の山の陰が後ろの山の雪の肌に映って、尾根のように見えることがあります。