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きのうえとしたのはなし
木の上と下の話
小川 未明
「台湾日日新報 夕刊」1940(昭和15)年5月7、8日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,558 字 · 8 页
」といいました。
ある日、急にこの木の下が、やかましかったのです。ちい子ちゃんの家が、引っ越しするのでした。
「おや、引っ越しなんだよ。」と、母すずめは、びっくりしました。
「えっ、ちい子ちゃんの家が引っ越しするの。」と、子すずめが問いかえしました。
「もう、私たちを守ってくれる、やさしい子供がいなくなります。」
ちい子ちゃんの兄さんは、空気銃を持ってすずめを打ちにくる子供があると、あぶないといってしかったのでした。
ちい子ちゃんの兄さんは、しいの木の下に立って、
「しいの木も、すずめさんも、元気でいるんだよ。」と、見上げたのでした。そこへ、妹のちい子ちゃんと隣の年雄さんが、走ってきました。
「年雄さん、僕、しいの実が大きくなった時分に遊びにこようね。」と、兄さんが、いいました。
「私も、そうしたら、またしいの実を拾って遊びましょうね。」と、ちい子ちゃんがいいました。
「こんどのお家に、大きな木があるの。」と、年雄さんが、ききました。
「町の中だから、こんな大きな木はないって、お父さんが、いったわ。」
「遠いの。」
「電車に乗って、おいでよ。」
子供らが、いろいろの話をしているのを、すずめは、木の上で耳を傾けて聞いていました。