轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きそおんたけのりょうめん

木曽御嶽の両面

吉江 喬松

「太陽」博文館、1908(明治41)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,819 字 · 32 页

青空文庫

はっと明るくなったと思って顔を上げて見ると、熊笹が低くなって日影が満面に照らしている。そして熊笹の所々に頭を顕して黄色い石楠花が咲いている。

熊笹の中を馳け下ると、栂樅などの林に這入る。いかに巨きな樹でも一抱えぐらいに過ぎないが、幹という幹には苔が蒸して、枝には兎糸が垂れ下っている。中には白く骨の如くになって立ち枯れしたものもある。あるいは枯れて倒れて草の中に縦横に横わっているものもある。その倒れた樹の上を飛び越え踏み越えて下るのだが、その急峻といったら全く垂直線の板上を滑り落ちるようだ。落下しないために絶えず足を動かしていずにはいられない。止め度なく飛び降りつづけるのである。ちょっと油断すれば先行者の姿は草か倒木の下に隠れて見失うのである。立ち止って「オーイ」と呼ぶと、遥か下の方で「オーイ」と答えるが、ただ声だけで、その声も妙に物凄く響く。樹林の中の空気も人の声を伝えた事は稀にしかないのだ。聞く者の耳も妙に変っている。この「オーイ」「オーイ」の応答が杜絶えると、自分の心臓の鼓動が高く響くだけが気になる寂莫である。

遠く下の方で谿流の響が耳にはいるが、降れども降れども中々達しない。