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きそおんたけのはなし

木曾御岳の話

木暮 理太郎

「日本山岳会会報」1933(昭和8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,366 字 · 15 页

青空文庫

動物園に行くと沢山飼ってあるあの縞栗鼠、私はそれを単に木鼠だと思っておりましたが、それが沢山おりました。それに高い枝から可なり太い蔓が下っておった。それにつかまれば上へ登れそうな太い蔓です。それを私は霧藻だとばかり思っていました。後で武田君にそれはシラクチヅルだと嗤われたけれども、木深い木曾の方では霧藻でもだんだん伸びて地へとどくと、地中へ根をはって大きくなるのだろうと考えていました。それがまたなかなか沢山ある。それを木鼠がさかんに上ったり下ったりしている。人を恐れる気配もなく、余り近く跳び歩くので終いにはそれを一匹捕ってやろうという気になって追いかけましたが、のろいようでも素早いので手捕りなどに出来る筈もありません。なにしろ黒木の林の中に栗鼠が沢山戯れていて、余り人を恐れないというような光景は、今では容易に見られないでしょう。われわれが山へはいる頃には何処にも森林が非常に茂っておって、殊に黒木の森林であると、その中へはいるのが楽しみでもありまたなんだか恐ろしいようでもあった。そんな林の中では少しの物音――がさっと音がしてもすぐぞっとする程緊張していたものです。