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みぼうじん

未亡人

豊島 与志雄

「諷刺文学」1947(昭和22)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,474 字 · 21 页

青空文庫

伯父さんたち一門でやってる出版事業に謂わば片足つきこんでる高木君は、あなたにとっては一種のインテリに違いなく、彼の特別の勉強は、代議士とか参与官とかにずいぶん役立つわけでしょう。つまり、あなたは自分で勉強する代りに、高木君に勉強させればよいわけです。そういうことは、日本の政治家には珍らしくないことですからね。然しそれが、悲しいかな高木君には分りませんでしたよ。そして高木君はただあなたの立候補に不満の意を洩らしましたね。然しなぜ不満なのか、悲しいかなあなたには分りませんでした。この二つの喰い違いは、ちょっと興味のある問題ですよ。

――そう言えば、愛情もそうでしょうか。

おう、本当の愛情など、あなたはいったい高木君に対して持ったことがありましょうか。

高木君はしばしば、あまりにしばしば、あなたを訪れて来て、ただあなたの側にいるのを楽しみにしていました。その高木君を、あなたはやさしく、あまりにやさしく、もてなしました。そしてあなたたちは、和歌のことを話し、芝居のことを話し、花のことを語り、小鳥を眺めました。それを私は悪いとは言いませんよ。早春の候で、もう梅の花は咲きそろい、桃の蕾はふくらんでいますからね。