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みらいのてんさい
未来の天才
豊島 与志雄
「人間 第三卷七月號」人間社出版部、1921(大正10)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,630 字 · 38 页
と、その気持に自ら気付いた時、私は俄に可笑しくなった。一生懸命に堪えたが制しきれなかった。私は往來の眞中で声高く笑ってのけた。胸がすーっとした。
私はあり余るほどの幸福の感じを、どうしていいか分らなかった。「未来の天才」という言葉が耳に響いていた。静子の面影が眼先にちらついて離れなかった。人間はこんなに幸福であってもいいのだろうか!……老人の笑いがまた私の胸を擽り初めた。飛んでも跳ねても足りなかった。私はまた声高く笑ってのけた。胸がすーっとした。私は気が変になったのではないのかしら? そう思うとまた可笑しくなった。
私は腕を組んでぼんやり考えた。何にも分らなかった。世界のうちに只一人でつっ立ってるような気持ちだった。