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みかいなふうけい

未開な風景

宮本 百合子

「婦人公論」1927(昭和2)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,478 字 · 16 页

青空文庫

元の八畳へ戻ると、急に茶器が散乱しているのばかり目立った。

「あーあ、すっかりおそくなっちゃった!」

さも迷惑らしくお清は片づけものをよせ集めながら欠伸混りで呟いた。が、みのえはそれが本ものでないのを知り、母親を侮蔑した。

飽くまで真面目でお清は娘に云いつけた。

「さ、早く表の締りしてきとくれ」

父であり夫である杉本剛一は当直の冬の夜であった。みのえは十六だ。

○

みのえに三つの妹があった。その児をみのえが八時過ると寝かしつけなければならなかった。

更紗の小布団の横にみのえもころがって、子供に顔をいじられながら何かお伽噺をしてやった。古風な猿蟹合戦、または浦島太郎。

「ね、浦島さん、亀の子へのっかって海へ行ったのよ」

浦島太郎は亀にのり

波の上やら海の底

みのえは唄っているうちに稚な心に戻った。鈍いような、鋭いような、一種液体のような幼年時代がみのえの発育盛りの不安な神経を覆う。彼女は子供と溶け合ってぼんやり転っている。――

突然、

「今晩は」

みのえは、愕然として意識がはっきりすると一緒に、母親が自分の子をひとに押しつけ、身軽に油井を迎え、喋ろうとしているのを感じ、泣きたいようになった。