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みかいなふうけい

未開な風景

宮本 百合子

「婦人公論」1927(昭和2)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,478 字 · 16 页

青空文庫

それでも人波の間に紛れてしばしばお清の後姿は彼等のところから――お清からは彼等が見えなくなった。

みのえはそれを楽しみ亢奮して売場、売場の間を歩いた。油井が着物を買うのに、お清母娘を誘い出したのであった。

「――一人で買いにいらっしゃいよ、番頭が見たててくれますよいい加減に」

「そりゃそうでしょうがね、三十にもなれば大抵細君がそんな心配はしてくれるものでしょう。侘しいですよ、ぽつねんと一人では」

お清は、

「他に人がいないわけじゃあるまいし、とんだお役目ね」

と云って笑った。

が、今先へ行く彼女の包みは油井の反物だ。

午後三時のデパアトメントストア。天井に舞い上った風船玉。華やかなパラソル。リズム模様、最新流行モダーン染。

――上へ参ります、上へ参ります。

――美容術をやって見せるんだよ。

――だって二十銭も違うんだもん、そりゃそうだろう。

緑色の仕着せを着た音楽隊はフィガロの婚礼を奏し、飾棚にロココの女の入黒子で流眄する。無数の下駄の歯の音が日本的騒音で石の床から硝子の円天井へ反響した。

エスカレータアで投げ上げられた群集は、大抵建物の拱廊から下を覗いた。