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ほんだな

本棚

宮本 百合子

「書斎」1941(昭和16)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,015 字 · 8 页

青空文庫

この叔父が、『女学雑誌』を読まなかったと、どうして云えるだろう。

同じ古本のつみ重りの下から、池辺義象の『仏国風俗問答』明治三十四年版と、明治二十五年発行の森鴎外『美奈和集』、同じ人の三十五年二月発行『審美極致論』が埃にまびれて現れた。「当世書生気質」を収録した『太陽』増刊号の赤いクロースの厚い菊判も、綴目がきれて混っている。

こんな本はどれもみんな父や母の若かった時分の蔵書の一部なのだが、両親は、生涯本棚らしい本棚というものを持たなかった。その代り、どこの隅にもちょいちょい本を置くところがあって、どこにでも坐ったところには、手にとってみる本があるという暮しぶりだった。

私の小さかった時には、父のテーブルの置いてある長四畳の片側が二間ぶっとおしで上下にわかれた棚になっていた。その上の段が即ち本棚で、文芸倶楽部、新小説、太陽などが、何年分もどっさり雑然とカーテンもなくつみ重ねられていた。

五つばかりの娘は手当りばったりにそれを下して来て、字は読めないから絵ばかりを一心にくって眺めた。

『新小説』か何かの扉に、一つどう見てもそこに立っているのが何だか分らない妙な絵があった。