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ほんぽうしょうぞうちょうこくぎほうのすいい
本邦肖像彫刻技法の推移
高村 光太郎
「道統 第四巻第十号」1941(昭和16)年11月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,058 字 · 10 页
この豊富な天然自然に囲まれて居ながら、どうしてその造型本能が生物としての人間動物の類に解放せられなかったか。古代以来の風俗すら長い間彫刻家の眼からは見はなされていた。徳川時代になって風俗人物が作られるようになってもそれは純粋な彫刻としてよりも人形としてであった。それはもとより大仏師の手に成るものではなくて巷間の人形師の作るものであった。日本古代の仏像造顕の絶大な勢力が日本彫刻の性質を千数百年に亙って決定した。芸術上の形式と伝習とが人間の審美性の方向を左右する圧力の大なるに驚く外はない。つまり人はその与えられた形式以外の眼を以て自然を観る事が出来ず、出来てもそれを再現するものではないという不文律を心の中につくってしまうのである。
今日のわれわれが日本古来の彫刻を概観する時、その精神的な崇高さに心打たれると同時に、またあまりに仏像ばかりなのに驚くのも是非ないことである。喜怒哀楽を持つ生きたわれわれ凡夫の美をその中に見ることの尠いのを嘆ずるのも已むを得ない。われわれは斯かる種類の美をわずかに中世に於ける能面彫刻に見て渇を医すのであるが、幸に日本彫刻の伝統の中に肖像彫刻の一目があって、天平以来彫刻と人間とのつながりをともかくも保持している。