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ほんぽうしょうぞうちょうこくぎほうのすいい
本邦肖像彫刻技法の推移
高村 光太郎
「道統 第四巻第十号」1941(昭和16)年11月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,058 字 · 10 页
この鑑真和尚にもう少し動きを与えたのが法隆寺夢殿にあるその創建者行信僧都の木骨夾紵像である。如何にも傑物らしい風格が闊達に出ている。材料の麻布を巧みに利用して衣襞をかなり写実風に表現し、同じ礼拝の当体としても鑑真和尚のよりはずっとわれわれの人寰に近づいている。奈良朝は夾紵、塑造、鋳金の黄金時代であるが、この行信僧都像の如きも漆と麻布と木屑の扱いが甚だ鄭重であり、その上内部の空胴には木組の支柱が巧妙に施されている。同時代の他の仏像の夾紵法によるものにもそういう骨組の入念に出来ているものが多く、時間と精力と費用とを問題外にして製作にかかっていた時代精神をよく見ることが出来る。
木骨はやがて木心とかわり、木心夾紵法はやがて純木彫へと移行し、遂に次代弘仁期の木彫全盛に及ぶ。この時代的推移は、芸術上の見地のみから言えば、漆と布や、蝋型の典麗雄渾ではあるが、深くえぐり得ず、鋭く切り立たし得ない素材から、もっと手応えあり、もっと切り刻み、もっと徹底的に彫り起し得る純木彫への要求から来ている。積み重ねて作るものから、えぐり取って作るものへの進みである。神護寺の木造薬師如来立像や、室生寺の木造釈迦如来坐像などの衣襞の揃って深くえぐり進んだ線条の繰返しの如きは、その表現せんとした沈痛にも似た求法の焼けつくような意慾を感じ