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すぎこ

杉子

宮本 百合子

「新女苑」1941(昭和16)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,552 字 · 19 页

青空文庫

問題の中に一つ年号があって、杉子はそれが思い出せなかった。火照る頬っぺたへ手の甲をあてて、下がきの紙へ考えながら麻の葉つなぎを描いていると、となりの席の沢田美津子が一人ずつ向っている机の上へ突伏すようにした顔を杉子の方へ向け、

「ああ悲観しちゃった」

まわりの二三人にはきこえる声で溜息した。

「ねえ、仇役の騎士は何て云った?」

杉子はいたずら書をしていた紙の端にアーサ王物語の中の一人の騎士の名を書いて、それを美津子の方へ向けてやった。それに誘われて何心なく、

「私は三番目、駄目だわ」

すると、今度は美津子が、その答を書いて杉子に見せた。

低めた声で、けれども格別こそこそしているのでもない声が折々あっちこっちで聞えて、その時間は過ぎて、ベルと同時にてんでに答案の紙を教壇のテーブルの上に重ねた。当番がそれを一まとめにして教員室へ持って行った。

それは午後の一時間目のことであった。あと国史と最後の体育で、みんなが控室で着換えしているところへ当番の井上八重がおびえた蒼い眼をして入って来た。

「きょう体育は休課になりますって。そして、みなさん教室へ集って下さいって」