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むらからのむすめ
村からの娘
宮本 百合子
「文化集団」1935(昭和10)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,485 字 · 9 页
昔から有名な宮城野信夫の義太夫は、既に東北地方から江戸吉原に売られた娘宮城野とその妹信夫とを扱っているのである。殿様、地頭様、庄屋様、斬りすて御免の水呑百姓という順序で息もつけなかった昔から、今日地主、小作となってまで東北農民の実生活は、果してどの程度の経済的向上が許されたであろう。アメリカと交歓ラジオ放送が行われている今日東北の農民は床の張ってない小屋に家畜とすんで地べたに藁をしいて生活している。徳川時代でも、地べた以下のところで生きていたのではないであろう。日本の農民生活は、原始的な状態のまま搾られとおして、今日この複雑な国際経済関係のただ中にねじこまれて来ているのである。
宮城野信夫「白石噺」の作者は、義太夫の文学の中に信夫のひどい東北弁をとり入れ、それが交通不便で、その東北弁の真偽を見わける機会もない当時にあっては珍しく、そこが所謂新趣向として都会の閑人たちの耳をたのしませたのであった。
今日娘の身売りは、道徳的な方面からだけ問題を見る方向へそらされて、徳川時代から引つづいたそのような風習の根源である、東北の農民の歴史的窮乏の経済的原因は、後の方へ引とめられている。