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とうきょうようさい

東京要塞

海野 十三

「サンデー毎日」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,341 字 · 37 页

青空文庫

とりあえずこの大事件を大官に報告して、指揮を仰いだ。

怪我人の原口吉治が、他の病院に入っているかも知れないというので、京浜地方に亘って調べてみたが、得るところがなかった。シンプソン病院では、それほど大した怪我でなかったから、入院しないでもいいかもしれないという話だった。

とにかく大きな魚が逃げた。

この上は、夜に入って、五郎造親方が帰宅するところを捕えて、これを説諭するほかない。お前も日本人だろうが、某大国に雇われているのを知らないわけじゃなかろう。そんならあの工事場の秘密を知っているかぎり打ち明けろ、などと責めるより外はないのだ。

ところが、物事がうまく行かないときは、どこまでも失敗がつづいた。というのは、五郎造がその夜とうとう帰宅しなかったことである。

尤もその夜ふけ、家には速達が届いた。それには五郎造の筆蹟でもって、工事の都合で当分向うへ泊りこむから心配するなと書いてあった。

奇怪なることである。どこから知れたことか分らないが、とにかく向うでは気がついて職人たちを帰宅させないことにしたのだ。そうなると、こっちの捜索は殆ど絶望というほかない。