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とうきょうようさい

東京要塞

海野 十三

「サンデー毎日」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,341 字 · 37 页

青空文庫

云うとおりしないと、この大砲を撃ちますよ。この砲口はどこを狙っていると思いますか。これを撃つと、大きな砲弾がとんでいって、或る重要な官庁を爆破してしまいます。そうすると、日本の動員計画も作戦計画も、なにもかも灰になってしまって、日本は戦争することが出来なくなります。どうです、撃った方がよいですか」

「卑怯者。日本人には、そんな卑劣な陰謀をたくらむ奴なんかいないぞ」

「――それとも平和的に解決しますか。わたくしの政府は、いま日本政府に平和的条約を申込んであります。それが聞きとどけられるようなら、これを撃たないで済むのです。貴方がいま乱暴して、わたくしたちの云うことを聞かないと、やむを得ずこの大砲を撃たねばなりません。どっちにしますか」

と、目の碧い士官は、五郎造をつかまえて子供だましのようなことをいった。しかしその脅しの文句の中にも、いまこの巨砲が某官庁に照準せられているというのは本当なのであろう。測量学の発達している今日、大砲の射手が目標を見て狙わなくとも、他の方法で観測した結果により、目標を見ずともうまく照準をつけることができるわけだった。ああしかし、この恐るべき攻城砲が亜鉛屋根の下に隠されているなんてことを、誰が知っているだろうか。