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ひがしやまじだいにおけるいちしんしんのせいかつ

東山時代における一縉紳の生活

原 勝郎

「藝文」京都大学文学部、1917(大正6)年8月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,142 字 · 134 页

青空文庫

もし足利時代をもって日本文化のルネッサンスといい得べくんば、そのルネッサンスの中心は『源氏』である。『源氏』は足利時代において始めて日本の『源氏物語』となったのである。『源氏』を読まずして足利時代の文化を理解することは、ほとんど不可能といってよろしい。足利時代の物語類の、千篇一律に流れているのは、その根柢においていずれも『源氏』を模倣するかで、これをもっても当時における『源氏物語』の勢力が推測される。しかして実隆は実にこの『源語』の熱心なる研究者であり、擁護者であった。

実隆が『源語』を読み初めたのは何歳ごろからのことであるか、日記ではこれを詳にし難いが、けだし文明の初年からのことであろう。始めは師に就いたのではなく、『花鳥余情』とか『原中最秘抄』などいう註解本によって研究したらしく、相談相手としては、牡丹花肖柏が出入したらしい。肖柏が実隆の少時よりの交友であることは、日記大永七年四月肖柏堺に歿した記事の中にも見えるとおりであるのみならず、肖柏の名の日記に見えているのが、宗祇の名よりも早いところからして考えても、実隆は先ず肖柏を知り、しかるのち宗祇を知ったらしい。