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ひがしやまじだいにおけるいちしんしんのせいかつ

東山時代における一縉紳の生活

原 勝郎

「藝文」京都大学文学部、1917(大正6)年8月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,142 字 · 134 页

青空文庫

つまり実隆はここに日本文学史上の一秘事たる『古今』の伝授を受け始めたのである。『古今』の伝習にやかましい儀式の附随しておったことは、世人もよく知るごとくであって、宗祇は「先ず心操をもって本となし、最初思い邪なくこの義を習う」ともいい、また「口決の事等、ただ修身の道にあり」とも説いた。講談中は魚味を食することに差支えはないけれど、房事は二十四時を隔てなければならぬということなども、談義中の一か条であった。すべて秘事であるので講談も密々に行なわれ、文明十八年の七月から始めて、翌十九年四月下旬、宗祇の地方遊歴に出かける時に至り、一旦中止となった。皆伝になったのではないので、翌々年すなわち長享三年の三月、宗祇はさらに『古今集序』聞書ならびに三ヶ事のうち切紙一、題歌事切紙一、以上を、実隆の邸に持参して、口伝いろいろ仔細があったと、実隆はその日記に載せている。

『源氏』、『伊勢』および『古今』の講義は、実隆が宗祇に習った主なるものであるが、このほかにもあるいは『詠歌大概』を読んでもらい、あるいは独吟連歌に関する心得を聞き、また宗祇の勧むるに任せて、源氏研究会とも称すべきものを、明応の初年に催したこともある。