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ひがしやまじだいにおけるいちしんしんのせいかつ
東山時代における一縉紳の生活
原 勝郎
「藝文」京都大学文学部、1917(大正6)年8月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,142 字 · 134 页
さてこうなると、最初からして責任なくして権利のみあった本所や領家はもちろんのこと、地頭ですらも全く無責任のものとなり、荘園内に善意の有力者がある場合をば別として、さもなければ全く無秩序の状態に陥ることとなったのだ。かような有様が永続されては、本所や領家や地頭名義人にはよいかも知れぬけれど、日本のためにはこの上ない災難である。本所や領家は、最初鎌倉からして地頭を置かれた時には大いに憤慨し、何とかして侵害された権利を恢復しようと焦慮したのであるけれども、承久・建武の経験をした後は、もはやあきらめをつけ、この上は武家と争うことを止めるのみならず、反対に武家の勢力を利用して、もってまだ手許に残って失われずにある権利だけを繋ぎ留めようとした。まことに思い切りのよい賢い分別である。しかしながらそれでもなお無責任者の手に莫大なる権利を残しているのであるからして、日本の健全なる発達のためには、荘園制度をばどうにかして顛覆する必要があり、実際に大勢はその打破に向って進みつつあったのだ。かの守護あるいはその下にある有力な被官人らが荘園を横領し、年貢を本所領家に運ばなくなったのは、すなわち成るべきように成り行いたもので、それらの横領者の御蔭でもって、将来の日本の秩序が促進されるということになったのだ。