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ひがしやまじだいにおけるいちしんしんのせいかつ

東山時代における一縉紳の生活

原 勝郎

「藝文」京都大学文学部、1917(大正6)年8月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,142 字 · 134 页

青空文庫

禁裏の供御とても不足がちには相違なかったけれど、その不足は必ずしも幕府の専横からして来るばかりではなく御料所内の百姓の横着か、または村の有力者の私曲から起因することもあった。しかしそれらが滞りなく納入になったところで、その金額がたいしたものでなく、ずいぶん余裕の少ない御経済であったことはいうまでもない。費用のないところから即位式をも往々にして省略されたのは、けだしそのためであろう。しかしながら恒例の節会等の停廃をもって、直ちに宮廷の御経済向き不如意のためと、一概に断定するわけにはゆかぬ。というわけは、御料からの収入で支弁さるべきものと武家から差上ぐる御用脚で支弁さるべき分とその間おのずから区別があって、もし武家からの差上金が滞うる場合には、それがためにそれによって支弁さるべき儀式を見合わせられるので、必ずしもこれをもって官帑全くむなしかったためのみということができぬからである。時には武家累代の重宝と称せらるる掛物が、武家からして質屋に入り、遂に質流れになったのを、二千疋以上を投ぜられて、御府に御買上げになることもあった。公卿の家に持ち伝えた日記を、その家の微禄のために散佚の恐れあるを憂えられて、代物を賜わって宮中に召置かるることもあった。