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とうようぶんかしにおけるぶっきょうのちい

東洋文化史における仏教の地位

高楠 順次郎

外務省文化事業部に於ける講演、1930(昭和5)年2月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,830 字 · 69 页

青空文庫

でどんな生活をしておっても自分の精神は失わない、どんなに蹂躙されても自分の理想を失うということはしない、このことだけはインド人はよく心得ているのであります。こういうふうの人種というものはよほど経済という事を頭に置かないような人間でなくては全く出来ないのでありますから、世界にこういう国は他にないといってよいのであろうと思います。それだからインドのことを考える時に、能く此国の状態を間違って説く人が多いのでありますが、そういう方面をお話する目的ではないのでありますから、まず理想が全く違っているということだけをお考え下さいまして、そうしてこの理想の流れがどの位の波紋を東洋に描いたのであるか、また今世界に向って描かんとしつつあるのであるかということを、だいたいはご承知のことでありましょうが、一通り辿って見たいと思うのであります。

二

インドの文明は古いように申しますけれどもそう古いものではない、文明としては極めて新しいものであります。新しいと申しましても紀元後二千年、その前がせいぜい二千年……もう少し刻んでいったら二千年に足りませんが、三千五百年かその前後の範囲の文明であります。