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そめきちのしゅぼん
染吉の朱盆
国枝 史郎
「サンデー毎日」1927(昭和2)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,824 字 · 35 页
こうなると俺も考えなけりゃならねえ」
足をとめたのは、さすがの岡八も、薄っ気味が悪くなったのだろう。
女はズンズンあるいて行く。直と藪蔭に消えてしまった。
「いけねえ、つけよう、どんなことをしても、たかが女だ、大事はあるまい……」
で直に追っかけた。
藪が左右を蔽うている。大木が空を遮っている。昼も薄暗い場所である。今は真の闇で、星さえ見えない。女の足音が遠くでする。
藪の底まで来た時であった。岡八、何かに躓いた。たじろいた所を人間の手が、グイと首根ッ子を抑えつけた。
ギョッとはしたがそこは岡引、スルリと抜けると前へ飛んだ。
「どいつだ」と叫んだものである。
もちろん姿は見えなかった。しかし商売柄感覚でわかる、たしかに五、六人の男がいる。じっと、こちらを狙っている。
「とうとうこいつえらいことになったぞ」懐中へ手をやるとスルリと十手、引出して頭上へ振上げた――来やがれ、ミッシリ、くらわせてやるから! こう決心をしたのである。
「オイ若いの」しばらくの後だ、闇の中から声がした。「じたばたするな、ついて来い! 悪い所へ連れては行かない。途法もねえいい所へ連れて行く。