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ざくろ

柘榴

山本 周五郎

「サン写真新聞」サン写真新聞社、1948(昭和23)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,342 字 · 25 页

青空文庫

女ばかりの明け昏れで、時には詰らない中傷や嫉妬や蔭口などに煩わされる。中には好んでいかがわしい話題に興じたり、悪い癖を持っている者などがあって、女というものの厭らしさあさましさに、身のすくむような思いも幾たびか経験した。けれども年の若い者は別として、二十を越した者には、色いろな事情から生涯独身ときめた者が多く、そこには独立して生きる者の張と自覚があったから、松室での生活に比べれば遙かに気楽でもあるし、伸びのびと解放された気持でいることができた。

「お嫁にいって苦労することを考えると、本当にこういう暮しは女の天国ね」

「むずかしい良人の機嫌をとったり、舅や姑の小言にびくびくしたり、年じゅう休みなしに家事で追い廻されたりするなんて、想像するだけでもぞっとするわ」

「女が嫁にゆくということは、詰り自分と自分の一生を他人に呉れてしまうことなのね」

こんな話をよくしたものである。然し三十五歳になる頃から、真沙の心に少しずつ変化が起こりだした。それは国許から長兄の娘が、江戸屋敷へ嫁して来たときに始まる。――その姪は早苗といって十八になり、相手は納戸役で渡辺大七といった。