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かきのきのあるいえ

柿の木のある家

壺井 栄

「柿の木のある家」山の木書店、1949(昭和24)年4月20日<br>「海のたましひ」大日本雄辯會講談社、1944(昭和19)年6月14日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 15,460 字 · 32 页

青空文庫

「買ってきたのさ。」

おじさんは、汗をふきふき、いいました。洋一はもううれしくてなりません。おじさんは、たのまなくてもきっと、山羊の乳をわけてくれるにちがいないと思いました。けれど頼まないわけにはゆくまいと思い、そのことを言い出そうとしましたが、何かひどく、自分がよくばりのように思えてきて、洋一はもじもじしていました。

「おまえ、どこへゆくんだ。」

おじさんがたずねました。洋一がミルク買いにゆくところだと答えると、おじさんは笑いだし、

「なんだ。もうよしな、よしな。こいつは一日に二升も乳を出すそうだよ。赤ん坊の二人や三人やしなえるよ。」

洋一はほんとうにうれしくなり、三太郎おじさんは、何といういい人だろうと思いました。こんないい人に、なぜ赤ん坊をやらないといったろうか、と思うと、ほんとに自分をけちん坊と思わずにいられませんでした。けれど、今さらここで、新之助をあげるともいいかねることは、そのご、おじさんが、ほんとに一度も、新之助をくれと云わないからです。洋一がそんなことを考えていると知ってか知らずにか、おじさんは、山羊の首につないだひもを、洋一の方にさし出し、