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かきのきのあるいえ
柿の木のある家
壺井 栄
「柿の木のある家」山の木書店、1949(昭和24)年4月20日<br>「海のたましひ」大日本雄辯會講談社、1944(昭和19)年6月14日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 15,460 字 · 32 页
もってゆくと、まだおつかいのフミエたちがいる前ですぐに皮をむいてたべました。たべながら「うまい、まったくうまい。柿はくだものの王様だからな。とくにこの柿はな。」
だからフミエも洋一も柿のおつかいは大すきでした。柿をもってゆくとおじさんはきまったように、
「そのかわり、いまにみかんがうれたら、食いほうだいだよ。」
とか、
「おいもはいらないかね。」
などといいながら、ぶどうや梨をたくさんくれました。ある日洋一は、むちゅうになって柿をたべているおじさんにききました。
「おじさん、どうしておじさんたちは柿をそんなに好きなのに、植えないの。」
するとおじさんは、
「そりゃあね、いわれがあるのさ。――ああうまい。」
と口の中の柿を、さもうまそうにのみこみ、二つめの柿をむきながら、
「昔はね、おじさんとこにも柿の木はあったんだよ。洋一んとこのにまけないほどのがな。ところがね、うちにくいしん坊の子供がいてね、ひとりで柿の木にのぼって、食いほうだいをして死んだのさ。疫痢ってやつさ。そしたら、そのときまだ生きていたうちのおじいさんがね、この柿は孫の仇だって、伐ってしまったのさ。